読売新聞(ヨミウリオンライン)に興味深い記事があったので紹介します。
東大の宮台康平投手が、日本ハムにドラフト7位で指名されたのも記憶に新しく、活躍してくれることを願っています。
捨てて勝つ…東大野球部を史上最強に導いた指導法 11/7(火) 10:50配信
この秋の東京六大学野球リーグ戦で東大が法大に連勝、2002年秋の立大戦以来の勝ち点を挙げた。
13年の春からチームを率いる浜田一志監督(53)は、15年春にやはり法大に勝って、東大の連敗記録を94で止めている。
これまでとは一味違う「浜田式東大野球」とは何なのか。
たっぷりと聞いた。■東大史上最強のチーム
――まず、秋季リーグを振り返って下さい。法大から勝ち点を挙げたほかにも、優勝した慶大から1勝しています。「いままでは宮台(4年=今秋のドラフト会議で日本ハムが7位指名)1人が頑張って勝っていたチームが、チーム一丸で勝てるようになったシーズンでした。東大の歴史の中でも、最強のチームといっていい。打線も1試合の平均得点が4点を超えて、完封負けが1度もなかった。完封負けが1度もないのは記憶にありません」
――早大に並んで単独最下位ではなくなりました。
「順位は(同率の)5位。ただ、最下位は脱出していないので、まだ、下克上をしないといけない」――もう少しやれた、という思いは?
「たくさんあるが、どこのチームも、勝負事というのは『もう少しやれたかな』が10個あって、そのうち3割ぐらいうまくいけば万々歳。そんなものじゃないですか」■桑田さんは「心を揺さぶる係」だった
――時間を遡ります。13年春の監督就任にあたって、元巨人の桑田真澄さんを特別コーチに呼びました。どういう狙いがあったのですか?「能力をアップする上での大事な要素に、『身近なお手本』というものがあると思っています。大阪桐蔭高が毎年強いのは、1学上の先輩のプレーが身近なお手本で、それをまねすればいいからです。東大野球部の中には残念ながら、そうしたお手本がいません」
「桑田さんにはコーチングうんぬんというよりは、本当にお手本を実際に見せていただいた。こうやってこういうふうに投げたらここにいくよ、と。それと、誰が言うのか、も大事。1年目の素人監督の僕が言うより、桑田さんのほうが響くだろうな、と。最初の2年間、桑田さんには『心を揺さぶる係』のようなものをやっていただいた」――月日がたって、いまでは、「勝てる東大」になりました。さらに強くなるために。これからのオフシーズンはどんな練習をするのでしょう。
「ボールはずっと持ち続けます。チームプレーをやるというよりは、基礎の反復です。スローイングをちゃんとやるとか。シーズン中とは違って運動量は増やします。消費カロリーは、シーズン中は2000キロカロリーまでいっていないと思いますが、オフは3000キロカロリー分くらいの練習をします。ランニング量は増えるし、ごはんの量も増えます」
――ごはんといえば、浜田監督は、(1)食事(2)ランニング(3)筋トレ(4)守備(5)打撃、と練習に優先順位をつけています、食事を一番に考える真意は何ですか?
「(東大の選手は)まず、体が追いついていないということで、そこからやります。打撃技術とかセンス系のものはなかなか身に付かないから、たとえ芯を外れても内野の頭を越えるぞ、というふうになるためには、やはりパワー。パワーは練習量に比例してついていきます」
――どんな食事ですか?
「まず個々の目標体重を設定します。それから練習での消費カロリーを計算して、それに見合った形で食べる。シーズン中は1日でご飯5合くらいですが、これからは練習量が増えるので、食事も増えます。食べろ、食べろ、と管理をしています」
――食事の「質」の方はどうですか?
「お金との兼ね合いで、なかなか『いい肉食って』とはなりません。たんぱく質の多い(鶏肉の)ササミはコスパ(経済性)がいいので割と活用しています」
■「捨てる」部分を作るには勇気がいる
――食事の次はランニングと筋トレです。まだボールを使う練習にたどりつきません。「しょうがない。優先順だもの。ランニングは、冬場は投手だと1日約20キロ、野手は10キロほど走ります。筋トレは、各自でジムに通っています。大学にも設備がありますが、ちゃんとしたトレーナーがいるジムに通わせています」
――守備練習と打撃練習の割合はどのくらいですか?
「全体練習は守備が7割、打撃が3割です。打撃の優先順位を下げたのは、まず(守備で)自滅しなければ勝てるということ。もうひとつは、打撃は楽しいので、放っておいても、自主練習でやるからです」
――一般の人がイメージする東大らしい知的・頭脳的な練習方法はないのでしょうか。
「東大だから頭脳プレー、と思う方が多いのですが、ないです。練習とは体に覚えさせることなので、基礎の反復練習だけです。ただ、分析とかそういう面では東大らしさはあります。投手のくせとか、配球傾向を研究するとか。秋季リーグで打線がよかったのは、そうした一面もあります」
「それから、捨てる部分を作るということ。目をつぶる。ここは打てないから捨てようとか。(他校と)いままで差があったものを全部は詰め切れないので、たとえば、インコースは一切捨ててアウトコースだけを練習するとか、外野は肩が強くないからバックホームは捨てて、フライはとにかく追いついて捕ることに特化するとか。どこか1個を伸ばすという考え方です。ただ、これは勇気がいるんですよ。普通は、あれもこれもやりたがる。これも一種の頭脳プレーだと思っています」■狙いと違う球がきてもブンと振れ
――戦術面について聞きます。監督は「4-3で勝つ野球」を掲げています。どんな狙いがあるのでしょう。「(東大は)大勝はできない。1-0で勝つのも無理。打撃技術は30年周期でどんどん上がっているので、投手は3点は覚悟しないといけない。そうなると、4点取らないと勝てない。残念ながら全試合で勝つチャンスがくるチームではない。常に3点以下に抑えて、チャンスがあれば4-3で勝とう、ということです」
「あの時バントしていたら、とかよりも、チームで一番大切なのは育成です。それから投手の起用。これは勝敗に大きく影響します。バント、ヒットエンドランは、戦術の優先順位としては、その次くらい。選手を育てて、相手の投手に応じて、この子のほうがヒットを打てそうだから代打に使おうとか。それが戦術だと思います」――「4-3で勝つ」ために心がけている采配は?
「ランナー三塁の守備の時に、前にくる(前進守備)か否か。前に来たときに、ちょっとしたきっかけでビッグイニングになってしまうことが、うちは多いので、(その時の状況が)3点以内なら前に来ない。4点取れる打撃力は、今季は11試合で45得点だから、目標を達成できた。例年は20点くらいで、1試合平均2点くらいのチーム。1試合あたりの得点は、たぶん歴代1位です」
――チーム本塁打が8本出ました。攻撃面で特に指導していることは?
「初球を振ると振らないでは、相手に与えるプレッシャーが違います。当てにいったり見逃したりしたらダメ。初球に狙いと違う球が来てもブンと振れ。これには勇気がいりますが、たとえば、初球にストレートを待っていて変化球きました、それでブンと振って空振りする。これはOKです。投手は、振ってきたら何か起こるかもしれないと思うものです」
――就任5年目で、監督の求める野球ができるようになってきましたか?
「まだまだです。本当に、ここ一番の走塁とか打球判断とか、場数を踏んでいないがために、物足りないというのはいっぱいあります。それを全部彼らに求めると、たぶん、爆発してしまうので、捨てる部分は捨てて、やっていこうと思います」
「理想の野球なんて絶対にできません。理想というと100-0で勝つようなことでしょうが、そうでなくて、51-49なんですよ、相手のある勝負事とは。たとえば、入部当初の1年生や2年生だと、成功率が9割に満たない戦術はやりたくないという。ヒットエンドランの成功率が9割ないとやりたくないとか。そう言ってくる子はいますよ。違うんだって。成功率51%ならゴーだって。それが僕の考え方です」■監督自ら高校を回って選手を探す
――東大にはスポーツ推薦がありません。どうやって、選手を集めているのですか。監督は、2008年から「スカウト部長」をしていると聞きます。「地方にいるOBの人に協力していただいて、僕がとりまとめます。監督になる前からやっていて、各地を回って高校生に声をかけます。『東大野球部のスカウトやっています。勉強頑張ってね』と。監督になってもシーズンオフは、いろいろな学校へ行きます。今では高校の先生150人くらいは携帯電話に登録しています。『いい子がいるから』と連絡をもらうこともあります」
――そうした活動で、実際にどのくらいの生徒が東大野球部に入りますか?
「100人に声をかけて入試に至るのが10人くらいです。そのうち、合格するのはせいぜい半分です」
――夏には受験生のための「勉強合宿」を開いていますね。
「大学近くの旅館に泊めて、勉強漬けです。東大を目指すではなく、東大野球部を目指す高3、もしくは浪人生が対象です。8月1日から15日まで2週間。東大近くの旅館に泊まって、昼は予備校に通い、夜は部員が家庭教師的に教えます。野球は息抜きにキャッチボールする程度です。1日の勉強時間は13時間くらい。監督になる前は付きっきりで教えていましたが、いまは、野球部の合宿があるので、時間があるときに『どんな感じ』と見る程度です。今年は15人が参加しました」
「2週間合宿したからといって、急に学力が伸びるというよりは、モチベーションの問題です。それから、こういうことをやっていますよ、と浸透したおかげで、高校の先生から『受けたいという子がいるんだけど』と連絡をいただけるようになりました。費用は、旅館代と予備校代合わせて20万円くらい。部員が教えるのは無料ですから」――浜田監督にとって、東大野球部とは何でしょう。
「まず、(日本の)野球の元祖であるというプライドを持っています(※1871年に来日した米国人のホーレス・ウィルソンが当時の開成学校(その後の旧制一高、現在の東大)で教えたのが始まりと言われている)。これが一番のプライド。二つ目が、天皇杯をいただいているリーグ(東京六大学)の一員であるということ。それから、僕は『文武両道できる派』なので、それを全国レベルで証明したい。そういうメッセージの発信地であると思っています」
――東大野球の魅力とは?
「弱いものが強いものに勝つ面白さと捉えている人が多いでしょうが、実際の魅力はそこに至る過程にあります。さっき言った頭脳プレーですけど、『ここは捨てる』とはなかなかやらないと思うんですよね。そういったところが魅力です」
――「捨てること」がお気に入りのようですね。
「お気に入りというより、そうしないと無理。しょうがない。(普通にやっていては)絶対に追いつかないですもん」
[出典:捨てて勝つ…東大野球部を史上最強に導いた指導法(読売新聞(ヨミウリオンライン))(Yahoo!ニュース > https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171107-00010000-yomonline-spo&p=1 ]
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「捨てて勝つ」ということ
インタビューの中で浜田監督が次のように言っています。
「それから、捨てる部分を作るということ。目をつぶる。ここは打てないから捨てようとか。(他校と)いままで差があったものを全部は詰め切れないので、たとえば、インコースは一切捨ててアウトコースだけを練習するとか、外野は肩が強くないからバックホームは捨てて、フライはとにかく追いついて捕ることに特化するとか。どこか1個を伸ばすという考え方です。ただ、これは勇気がいるんですよ。普通は、あれもこれもやりたがる。これも一種の頭脳プレーだと思っています」
野球のゲームの中でも、捨てるということは良くでてきます。
ランナーを進めるために「送りバント(犠打)」をすることがあります。
ヒットになるかも知れない打席を捨てることになるわけですが、これも勝つために捨てています。
また、強打者を「敬遠(四球)」することがあります。
もしかしたら打ち損ねてアウトになる可能性もあるわけですが、勝つためにその可能性を捨てているのです。
これはスポーツに限らず、私たちの人生にも通じることだと思います。
テスト勉強をするとき、あなたならどうしますか?
全ての教科をまんべんなく勉強する人もいるでしょう。
しかし、苦手な教科はなかなか頭に入っていきません。
それよりも、苦手な教科は捨てて得意な教科で点数を稼ぐ方が、トータルでは高くなるかも知れません。
また、テスト当日でも、わからない問題は捨てて、わかる問題を確実にとる方がケアレスミスがなくなるでしょう。
日本の社会では「全部平均点」を求められ、学校や社会でそういう人を作ろうとしています。
しかし、勉強は苦手でもスポーツは得意とか、絵が上手とか、歌やダンスが上手いとか、そういう人はたくさんいます。
「全部平均点」を求められると落ちこぼれでも、ある一つの分野では優秀かも知れません。
勉強を捨てて、スポーツに打ち込んだり、芸術に打ち込むことで、すごい事を成し遂げる人がいるかも知れません。
仕事や結婚にしても、夢や高い理想を捨てて、確実なものを選ぶことが結果的に幸せになるのではないでしょうか。
捨てるということは、「あれもこれも」という執着を捨てることであり、今の自分で充分であると満足することにつながると思います。
いろんな執着を捨てることが、心の平安を得る近道なのではないでしょうか。
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